二宮和也のIt [一途]第5回 コンプレックス

めぐりあった出来事も、進んできた

道のりも、どうとらえるかは自分次第。

あまのじゃくに見えて、実は一途な

二宮和也の一途とはー?


新しいトランプに愛しそうに触れる。右手に持ったカードを左手で広げては収める、を何度も繰り返す。彼の手はとても印象的。言葉よりも器用に雄弁に気持ちを物語っている。
「手?そういえば、昔、映画の撮影中に『ハンバーグみたいな手だな』って蜷川(幸雄)さんに言われたことがあったな。自分じゃ気つかなかったからさ、そんなにオレの手は丸くて茶色いかなぁ?って驚いた(笑)」

たしかに。よく動くその指は、決してすんなりと長いわけじゃない。


「自分ではこの手がいいとも悪いとも思わないけど(笑)。人は”コンプレックス”っていう言葉をいつ覚えるんだろうね。子供の頃は知らないじゃん。自分が何を持っているのか、何を持っていないのかなんて。たいてい人に言われて気づくんだよ」

スベシャルドラマで脳性まひのトップセールスマンを演じるにあたり、「脳性まひは、ひとつの個性としてとらえている」と語っていたニノ。


「脳性まひって胎児の時、脳に傷がついたことで発生するらしい。原因はわかっているから、不思議な現象じゃない。生きる苦労は大きいと思うけど、本人はずっとそれで生きてきたわけだから。他人がよく知りもしないのに”障害だからかわいそう”と特別視するのはどうだろう。じゃあ、オレの左利きは?もちろん、それとこれとはある。見た目には気づかれなくても、狭いところでご飯を食べれば、左利きだから隣の人に手がぶつかって食べにくいしね。
大切なのは人との違いを知ることだと思う。たとえば、障害を持った子の真似をする子がいたとしても、それは、自分と違うから純粋に興味があってしているだけなのかもしれない。大人に遠回しな説明を受けるより、自分から近づいていけば、ずっと相手のことが理解できることだってあると思う。それを先生がやみくもに『やめなさい!』ってしかるから、変なムードにすり変わっちゃうんだよ。知らないままで偏見や差別が生まれるほうが残念だよね」

立場、持ち物や条件なんかで、人は単純に分けられない。



「人間関係に上下をつけるのは好きじゃない。基本的にはみんな同じでありたいと思う。だから、オレは誰とメシ食いにいってもできるだけワリカンにするの。年上の人とメシに行って、おごってもらう姿勢でいると、最初から関係性が決まっちゃうでしょ。言いたいことも言えないなんてつまらない(笑)。後輩と行く時も『おごるから気遣えよ』みたいなのは苦手。オレが入口に近い席なら注文取るし。それは、子供の頃から人づきあいが苦手だったからこそ、身についた考え方かもしれない」

いろいろ持っているほうが
生きるのが大変だと思う


「唯一のコンプレックスは”同世代”かも。すごく苦手だった(笑)。16歳で『あぶない放課後』っていうドラマに出た時に自覚したの。それまでのドラマは大人に囲まれていたのに、あのドラマはほとんどが同世代。うまく会話できなくて⋯⋯それ以前に、近づこうともしてなかったんだけど(笑)。気がついたら、1カ月で6キロもやせちゃって。もともと、そんなに体重があるほうじゃなかったのに、一気に減っちゃった。心身ともにギリギリだよね。スケジュールの忙しさもあったんだろうけど、よほど苦手だったんだろうな(笑)」

他人ごとのように淡々と笑顔で話す。


「でも、あの現場で(高橋)克実さんにも出会えたわけだし。その後、バラエディ番組で誰かの孫になったり、子供の面倒見たり、経験を重ねるうちに人間にも少しずつ慣れていったしね。結局、コンプレックスはとらえ方次第なんだと思う。それを重荷にする人もモチベーションにする人もいるけど、オレはどっちでもないかな。猫背も客観的に見れば、カッコ悪いだろうけど、普段、自分じゃ自分の姿は見えないからいいやって(笑)。顔だって、家庭環境だって、特別恵まれているわけじゃないけど、他人をうらやましいとは思わない。だってさ、いろいろ持ってる人は逆に大変だよ。すごくカッコよくて、何でも持ってるような環境に生まれ育った人は、周りに気遣って生きてる人も多いから。この程度、少し足りない程度でいいのかも(笑)」

闇を闇とは、光を光とはとらえない、それもまたニノらしさ。光も闇も彼にとってはただそこにあるもの。


「やっぱり、あまのじゃく?実はオレね、効率のいいことが好きなくせに、意外とよけいなことしちゃうんだ。立入禁止の看板を見ると入りたくなるし、混ぜるなって書かれたモノをこっそり混ぜたくなる(笑)。ダメだとわかっていても、手をのばしちゃう。なんでだろうね。それは小さなコンプレックス(笑)」

Kazunari Ninomiya

1983年6月17日、東京都生まれ。嵐の新曲『Believe』が大ヒット中。主演のスベシャルドラマ『DOOR TO DOOR』(TBS系)は3/29放送。雜談中、パッグからおもむろに新しいトランプを取り出したニノ。裏面には”NINO”と”ARASHI”をデザインした文字が。「マジシャンの友達の誕生会をやった時、軽い気持ちでみんなの分もおごったら、みんながお返しに作ってくれたの。50セットも!絶対、倍返しだよね〜」 と、うれしそう。「昨日もらってから 、慣らすためにずーっと触ってる。ますます家から出なくなって大変(笑)」

MORE 2009年5月号

*Mami*

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