二宮和也のIt[一途]第6回 台本のない仕事

これまで歩んできた大切な一途、
そこで見つけた一途な思い。
時間とともに変わりゆく、”It”。
今、リアルに感じている”It”を知る。



アドリブをやるのは勇気がいるけど、
一度でもうまくいくと味をしめる。
恐怖より、快感が勝っちゃう(笑)

彼のグローブの真ん中でとらえられた球は、ピシッと気持ちのいい音を立てる。投げた球は、青空にきれいな弧を描いて飛んでゆく。いつまでも眺めていたくなるような、リズムのいいキャッチボールをする。
「小学校時代にやってたから(笑)。ポジションは流動的だけど、だいたい内野手かピッチャーだった」

ニノの仕事はキャッチボールにも近い。バラエティも演技も撮影もインタビューも、目の前の相手を観察して、その時々、求められる動きや言葉を瞬時に考えて表現していく。


「この頃、台本のない仕事が面白いかなぁ。バラエティの仕事が楽しいのも、とっさのやり取りが面白いからだと思う。だいたいの流れはあっても本番では何が起こるかわからないほうが、相手の話をよく聞けるし、その時々が楽しめる気がするから」

会話においては自分から”投げること”が得意な人。相手の個性や周囲をよく見て、笑いのツボや会話の糸口をすくい上げる。


「お笑いでいえば、ツッコミかな。オレのはツッコミというより、いじりに近いかも(笑)。仕事でもプライベートでも、いつの間にか、そういう役割になっていた。それは、嵐というグループにいたのが大きいと思う。嵐ってどこに行っても5人で固まって輪になっているような内弁慶ばっかりで、コンサートのMCですら内輪ネタで盛り上がっちゃうグループだったから(笑)。せっかく番組にゲストを呼んでも入りづらい空気になりがちだったの。それで、自分が先に前に出て、外にツッコミを入れることで、風穴を開けたかった。そのうち、自然と翔ちゃんが仕切るようになったり、相葉くんのボケる回数が増えたり、それぞれのやり方で嵐の世界を広げてくれて、世間的にもだんだん嵐の個性が認知してもらえるようになった。最近は、オレも年齢や立場に関わらず、ツッコめそうな相手には誰にでもツッコめるようになったよ(笑)。
ツッコミの技術やアドリブで会話することの面白さは、芸人さんたちから学んだと思う。もともと芸人さんが大好きだから。今田耕司さんやくりぃむしちゅーの上田さんは、いつ誰とやっても場を面白くできるのがすごいし、ペナルティのヒデさんは最近、特に好き!あの人って普段は後ろに引いているようで、必要な時は前に出ることもできる。ここ一発のコメントにもセンスあるんだ」

いかりやさんの言葉は今も心に残っている


「それから、最も影響を受けたのは、いかりや(長介)のおじさん。『涙をふいて』というドラマで共演してから、ずっと仲よくしてもらってた。お芝居やしゃべりはもちろん、グループの中で自分は“全体を見よう”という意識を持つようになったのもいかりやさんの影響だし、いろんな仕事を経験することの大切さにも気づかせてくれた。今でこそ、役者をやる芸人さんは増えたけど、その先駆者はいかりやさんだったと思う。いかりやさんは、お笑いも芝居も大好きだったからね。「ニノも変なプライド持たずにいろんな仕事をしな。みんなジャンルを超えて仕事をする時代がもうすぐ来るからな」って。その言葉はたぶん、今もずっと自分の中に残っていると思う」

”台本のない仕事”を経験して、さまざまなことが身についたと言う。


「”演じること”だってドラマを10本より、1本のバラエティに出て磨かれた部分はあったと思う。演技も台本がすべてじゃない。その日の天気が晴れなのか曇りなのかでも微妙に変わるものだから。エラソーなことは言えないけど、その時々の状況をよく見れば拾えるものはたくさんあるし、それを生かしたほうが、面白いものになる気がするんだよね。
自分のやりたいことをアドリブでやるには勇気がいる。今だって、バラエティでツッコむ時は毎回、失敗するのが怖い。マジックも生放送で披露する時はみんな『大丈夫?』って顔で見てるけど、実は自分がいちばん『大丈夫か?』って思ってるよ(笑)。でも、やらなきゃ時間はどんどん流れてタイミングを逃がしちゃうから、思いきってやってみる。やってダメなら同じことはやらなきゃいいだけだし、一度でも、うまくいくと“味をしめる“んだよ。そうすると、怖さより、やってみたい気持ちが勝っちゃう。野球もそう。優勝なんて無理だと思っても、逆に準優勝を目指すほうが難しい。自分の実力はどれくらいなのか、どこまでやれば満足できるのか、一度は優勝を目指してみないとわからないから」

キャッチボールが終わった時、ふと、天に向かって思いきりボールを放った。落ちてくる球を、見もせずに、後ろ手でキャッチ。その鮮やかな動作に歓声が上がる。


「野球をやってると、こういうのが一時、はやるんだ。何度も何度も練習したから、今も体が覚えてる(笑)」



Kazunari Ninomiya

1983年6月17日、東京都生まれ。嵐の新曲『明日の記憶/Crazy Moon~キミ・ハ・ムテキ~』 が5月27日に発売予定。実はお笑い好きだというニノと”関西と関東の笑い”を話していると、「オレのツッコミは理屈っぽいかも」と苦笑い。「関ジャニのツッコミ役、ヒナ(村上信吾)とメシ食った時、お互いツッコむポイントは一緒なのに、言葉のセレクトが全然違うことに気がついて⋯⋯。オレのほうが、いつもツッコミが長くて理屈っぽいの(笑)」たしかに!?”

*Mami*

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