二宮和也のIt[一途]第8回 選択の自由

日々、成長し続けている

二宮和也の一途をつくっているのは、

日々の小さなItと一途の積み重ね。

明日は、どんな景色を見ている?

新しいビルが建設中の現場。その真ん中に立つ。まだ柱しかない瓦礫の山の中では、どんなビルが建つのか、まだ想像もつかない。

「オレっていくつだっけ?」

撮影を終え、インタビューへ移ろうとした最中、ニノがふとつぶやいた。今年、26歳になりますよねと答えると、「そっか、26かぁ」と小さく笑った。スタッフの名前や新曲の振りを覚えるのは誰よりも早いのに、自分の年齢を覚えていないだなんて、何だかおかしい。


「どうでもいいことは忘れちゃうんだよ(笑)。最近はそもそも記憶力が怪しい。昔は自信あったけどね。ジュニア時代なんて、あらゆる先輩の歌や踊りやコンサートの構成を覚えていたし、ドラマの台本もすぐに記憶できたけど、最近は覚えられないなぁ。でも、それって肉体的な衰えじゃなくて、モチベーションの問題かも。ドラマの台本に関しては、覚えられないんじゃなくて、覚えないようにしてるっていうのかな……」

そう思うようになったのは、昨年のドラマ『流星の絆』の撮影が始まった頃からだと言う。


「あの作品は始まる前から"転機になる"って予想してたけど、そのとおりになった。それまで、ドラマはきちんと準備して本番バシッと決めようとしてたけど、その準備をあまりしなくなったの。当時は1年以上もドラマから離れて、マジックばっかりやってて。久々で大丈夫かなと思ってたけど、台本を読んだら、一気にイメージがふくらんだ。前よりも早く深く、その世界を理解できるようになっていることに気づいたんだよね。ドラマを連投している時のほうが、現場の勘みたいなものはあるだろうけど、台本を読み込む力は誰にも負けてなかったと思う(笑)。それって、マジックのおかげ。マジック本って、すごく難しいんだよ。お芝居の台本は全員のセリフも状況も書いてあるけど、マジック本は自分のセリフしか書いていないようなものだし。相手が何を言ってどう動くかわからないから、自分で想像して理解して表現するしかない」

子供の頃から紙切れを具現化するのは得意


まるで難解な小説を読むように、マジックの本を深く読み込んで表現する。そして、それを楽しんでいる。


「子供の頃から、紙切れの世界を3Dに具現化するのは得意だった。13歳くらいから、舞台や映画やお芝居をやらせてもらってたから……。やっぱりね、書いてあるとおりにやるだけじゃ、具現化できないって思う。美容院に女優さんの切抜きを持っていっても、単純に同じカットにするだけじゃ、イメージに近づかないのと一緒。人それぞれ、顔も空気も違うからさ(笑)。紙切れの説明を丸暗記してもしょうがない。どう解釈して、イメージをふくらませるかが大切なわけ。小さい頃から訓練していたその力が、マジックで強まったんだと思う。視界が広がって、より深度の深いところに入れるようになったから、久々にドラマに戻った時、台本の情報量がすごく多く感じられた。先に答えの書いてある問題集みたいで。こんなに情報があると、イメージがふくらみすぎてやりづらくなるなって。だから、頭で覚えようとせずに、自然に自分の中に入ってくるもので演じられたらいいかなと思ったんだ。台本に『ここで激高する』って細かく指示してあっても、タイミングなんて現場の空気や流れによって変わるものだし、『○○だから、泣く』って決められたとおりに演じちゃうと、途端に世界が薄くなる。演じる人によっていろいろ選択肢を持ってるだろうし、その人がそのときどき、最適なものを選ぶほうが面白いものができると思う」

「その瞬間のベストを、できるだけ柔軟に、自由に選択したい」と言う。


「だって、何を選択するかで、その人の個性も人生も決まるんだと思わない?役者だけじゃない。今日は朝食を食べるか、食べないか。シャワーにするのか、お風呂に入るのか。何を話すのか、話さないのか。小さいことから大きなことまで、毎日、無数の選択肢がある中、選んだことの積み重ねで、その人がつくられていく。だから、台本を覚えたとおりにやるなんて、演じる側も、見てる側もつまらないでしょ。『絶対ヒットさせたい』とか『監督に気に入られたい』っていう理由で演じるなら、方程式に乗っかるのもアリだけど、たぶん、自分は少し違う。だから『DOOR TO DOOR』みたいに、長年一緒にやって、そういうオレのことわかってくれてるチームは、すごく自由にやらせてくれんの(笑)」

もうすぐ4年ぶりの舞台が幕を開ける。そこでは、どんな選択をするのだろう。今はまだ、彼自身にすら想像もつかないからこそ面白い。

日々の選択の積み重ねで

その人の個性も人生も決まるから、

できるだけ自由に選びたい


Kazunari Ninomiya
1983年6月17日、東京都生まれ。嵐の新曲『Everything』が7/1発売。また、4年ぶりの舞台『見知らぬ乗客』(東京グローブ座にて7/18~8/11)を控えている。"青春の音楽"についてたずねると、大好きなバンドの曲名が出てくるかと思いきや、V6の『over』という答えが。「昔、コンサートのバックについてたから、歌詞や振りを覚えるためにV6の曲は通学の電車の中でずーっと聴いていた。10代半ばなんてそればっかだったもんね。あれこそ、オレの青春だと思う」

*Mami*

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