二宮和也のIt[一途]第10回 問題と答え

自らの一途を、ただ一途に

走り続けてきた。二宮和也が

そこで出会った大切なもの、

味わってきた気持ちとは――。



その日は舞台の本番を終えてすぐに現場に駆けつけた。ここ半月、一日2回舞台に立ち、合間にテレビ収録や雑誌の取材を深夜過ぎまで受ける日々が続いている。スケジュールは過密を極めるはずなのに、全く表情には出さない。「別にいつもと変わらないよ」としれっと言う。
「オレが忙しいかどうかなんて、見ている人にはどうでもいいことでしょ。もともと、オレの場合、感情と表情が一致しないみたいだけど(笑)。本人的にはうれしいのに、うれしそうに見えないって言われるから」

それでも体は正直だ。疲れているようで、心なしか少しやせて見えるし、いつもより猫背になっている。


「腰を痛めちゃったの。『働きすぎだ』って(笑)。そんなこと言われてもしょうがないよね。やるしかないんだから。もともと腰は弱くて。ちっちゃい頃にバク転しすぎたのか、10代から坐骨神経痛だった。腰痛ってストレスも原因なのかな。でも、そんなこと考えてもしかたない。これはストレスかどうかなんて考えるほうがストレスだよ(笑)。痛みがやってきたら治せばいいだけだから」

ジャニーズJr.時代、腕を骨折しても言わずに先輩のバックで踊り続けていた。嵐のコンサートツアー中、リンパ管炎になったときもそう。いつもどおりのステージを見せていた。


「リンパ管炎の時は腕にクーラーの風が当たるのも痛いくらいキツくて。入院先の病院から、会場の横浜アリーナまで通ってたの。今考えるとけっこうスゴい話だよねぇ(笑)。痛みとか、不安とか、嫌いとか、マイナス感情はあっても突き詰めないし、表さない。そばに嫌いな人がいても普通の顔して話せるし、緊張するとか、落ち込むことも基本的にないよね。もともとの性質なのか、そういうくせが染みついたのかわからないけど……。否定的な感情だけじゃなく、考えないほうがいい問題ってけっこうある。たとえば、この先のオレはどうなるのか?なんて答えの出ないことを考え続けても無意味だし、エネルギーの無駄遣いでしょ」

女の子は結果がほしいけど
男の子は過程を楽しみたい


たしかに、考えすぎると走る速度が落ちてしまう。できることが減ってしまう。その瞬間を逃してしまう。


「このゲームをクリアしたら自分はどんな人間になるのか、なんて考えながらゲームはしない。ただ、楽しいから夢中でやってるだけ。仕事も同じだよ。怪我とかトラブルとかいろいろあっても、最終的には楽しいからやってる。それがわかってるからグダグダ考えない。考える前にやるべきことってたくさんあるし……。
目的とか結果とか評価とか、答えを探しながら生きたくない。嵐だって、昔から東京ドームでコンサートしてみたいとは思っていたけど、それを狙って、毎日仕事してきたわけじゃない。小さな場所でもローカル番組でも、その時、目の前にあるものを楽しんでやっていたら、現在につながっていたんだと思う」

答えを求めずに、今、あるものに全力で向かう――。シンプルなことだけど、それがなかなか難しい!


「それもわかるよ。女の子はたいてい、"答え"や"結果"が好きだもんね。逆に男の子は"問題"や"過程"が好きなんだよ。だから、すれ違うのかな……。つきあっていても、『私を好きか好きじゃないのか』、女の子はいつも気にするけど、男はハッキリ言葉にしたくない。たとえば、彼女の誕生日プレゼントも『これが欲しい』ってハッキリ言われるより、デート中、何も言わずに可愛い服を見つめてくれているだけのほうがいい。その彼女の横顔を見て、もしかしてこれ欲しいのかな?って男は想像したいんだと思う(笑)。」

恋愛は、答えを言わないほうが色っぽいし、知らないほうが楽しめる。


「それこそ、オレの情報ならウィキペディアとか見てもらったほうが早いでしょ。あれが当たってるかどうかは別としてね、言葉にできることは載ってるでしょ。もし好きな子に『何考えてるかわからない!私のことどう思ってるの?』って言われたらちゃんと言うよ。でも、気持ちは言わなきゃわからないっていう子は、言ってもわからないと思う」

痛みの話は、いつの間にか恋の話へ。夢中で話すうち、表情が和らいでいた。次の仕事までぎりぎりの時間なのにあせる様子はみじんもない。

「答えとか結果を求めるっていうのは、究極、どんどん終わりに向かっていることでもあるでょ。仕事も、恋愛もそう。恋愛の答えを結婚にしたら、それがかなった時に何かが終わっちゃう気がする。女子が早く結婚したいのは乙女心だろうけど、男は、好きな女性のドレス姿は、いくつになってもキレイだなって思うからね。心配しなくても大丈夫だよ(笑)」

仕事も恋も、答えを求めたくない。

それが見つかった途端、

何かが終わっちゃう気がするから



Kazunari Ninomiya
1983年6月17日、東京都生まれ。嵐の10周年記念コンサート『ARASHI Anniversary Tour 5×10』がスタートしたばかり。主演ドラマ『天国で君に逢えたら』は9月下旬放送予定。撮影中はもちろん、取材中もなかなか腰を痛めていることを言わなかったニノ。「最近、飲んでる?」、「全然飲んでない」という会話から、よく聞き込んでみると、いつもどおり淡々と「腰が痛いから飲めないだけ」と。しかも、小さな動きすら痛いほどの腰痛!その我慢強さとわかりづらさ(笑)にあらためて驚きつつも、慌てて座ぶとんを補充しました。

*Mami*

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